「まずは構築/利用するという, 実戦派向きの良書」
��はじめに>
Linux を使ったいわゆる HOWTO 本は最近多く出ているが, 内容が雑なものが増えている感じがして, 本屋でパラッと立ち読みして買わないことが多くなっている. しかし本書は, できたての初版本にも関わらず, 誤字脱字は目につかず丁寧に仕上げられているという印象を受けた.
また全章を通じて (Tips) というワンポイントアドバイスや (資料) という URI リンクなどが記述されており, 本書で記述するには分量的に苦しいと思われる内容について, より深く知る手だてが用意されており好感が持てる. 特に (Tips) で書かれていることの多くは, 実際に作業を行ってハマったところが書かれているような感じであり, 私にも思い当たるものがある.
また, 本書の方針と思われるので欠点と言うつもりはないが, 各種ソフトウエアの動作原理に関する話などはあまり記述しておらず, まさに本の題名にある「作り方」と言う感じで, この通りにやれば一応動くものができるという意味で実践本意に仕上げてあり これも好感が持てる.
逆に非常に読みづらいと感じた点は, 本書が Linux だけをプラットフォームとして限定しておらず, Windows 系 OS も対象としているために, Linux 上の設定に関する記述と Windows 上の設定に関する記述が交互に出てくるところである. ただし, 実際の読者は自身に関連するところだけを読み, 他は読み飛ばすとも思われるので, 今回のレビューなど全体を通読するときにのみ感じる不満かも知れない.
��各章で印象に残った部分>
・Part1 Namazu+CGI でサーチエンジンを作る
本章では, 一般の会社で多く用いられていると考えられる Microsoft の Word/Excel/PowerPoint や PDF に関しても検索可能とするためのツールも紹介されている. 社内の文書管理に適用しようと思っているが, なかなか時間がとれない人には簡単なインストール手引きとなり, 便利であろう.
・Part2 PostgreSQL+PHP でデータベースサイトを構築
データベースを個人で使いこなしている方は少ないと思う. 私も使いこなせていない. 本章はそういう方向けには取っつきやすい入門書の代わりになるのではないかと思う. MS Access に似ている Tcl/Tk ベースの PgAccess によるデータベースの操作がかなり詳しく示されているが, このようなものがあるとは知らなかったので新鮮だった. ただ, 私自身は Web 経由でのアクセスやバックエンドでの処理に RDBMS を使うことが多いので, デバッグ時を除いてこのツールを使うことはないと思う.
・Part3 さまざまなデータの活用
ここでは他章で示されていなかったより突っ込んだ内容やその他の Tips 集という感じで書かれている. sed/awk のような, 最近では Perl に取って代われた印象があるスクリプト言語でも, ちょっとした工夫でいろいろと楽しめると言うことが示されている. 具体的には awk による CSV ファイルから HTML への変換という例が示されており, なかなか楽しい. また, 最近 Web 上で増えている PDF データを生成/変換するツールも簡潔にまとめられており, 「使える」印象を受けた.
・Appendix
本書で取り上げた Namazu, Apache, PostgreSQL, PHP のインストール手順が まさに「手順」として簡潔にまとめられている. 各章で出てくる上記以外のソフトウエアに関するインストール手順も 最後にまとめた方がすっきりするのではないかと考える.
��まとめ>
スタティックな Web ページの公開だけを行っている方は, 一度本書を手にとってより活用できる Web サイトを作ってみてはいかがかと思う. 本書はその際の構築に関する基本的な項目は網羅されていると思う. 400 ページ弱とかなり厚い本書であるが, Windows に関する記述などを飛ばして読めばかなりすっきり頭にはいるのではないかと思う. 値段もそれほど高くなく, なまず本や マンモス本を お持ちでない方には最初の取っ掛かりとしてお勧めできる.
0 件のコメント:
コメントを投稿