2004年6月12日土曜日

上達の法則―効率のよい努力を科学する

岡本 浩一氏の著書は

に続いて2冊目である。


しかし、同一著者とは知らずに購入した。

著者は社会心理学者である。
上達するという事を、脳の認知・理解の構造と過程から説明すると共に
自身の経験をもとに本書の論旨を展開しており、説得力がある。

上達の方法論も概論として6つの節で示し、
具体的なステップも10示している。
いずれもそれなりに納得がいくものである。

また、スランプに陥る原因と対策についても記述している。
��これに関してはスランプ対策に絞った近著があるようだが。

読み終わって思ったのだが、本書は本書の定義によるところの
中級者以上向けの本ではないかと思う。
初級者は全くピンとこないのではないかな。

また、私自身も上級かなと自惚れていた分野も
「あぁ、まだまだ中級に入ったばかりだな」と思わされた。

本書の中でピンときた部分を引用する。


P.90
『技能は、手続き型知識であり、本来言葉で表せない。
けれども、上級者はこの言葉で表せないものの要諦を、メタファによって、相手に雄弁に伝えることが出来る。』

響く言葉ってあるよね。


P.94
『上級者から見ると、中級者は苦心しなくてもいいところで苦心し、苦心しなければならないところで油断しているところが多いのである。』

これを私は「全力でエンジン回しているけど、タイヤが空回り」と言っています(^^;


P.127~P.128
『中級者から上級者に脱却したとき、「脱却した」と言う実感を持つのがふつうである。』
『それを経験することによって、その特定の技能を越えた自信が出来る。』
『「やればできる」というような根性主義の自信ではない。合理的に考え、じっくり時間をかければ、見え方の違う次元に上ることが出来るという自覚である。』



P.166
『...名人の三人が鼎談したことがある。そのなかで司会者から「健康の秘訣はなんですか」と尋ねられた三人の答えが一致していた。
「将棋に勝つこと」だったのである。』

仕事をしていて成果が上がるとか納得行くものが出来たときとか、やはり相当元気になるもんね。
そう言う仕事をしたいと思うし、そう言う仕事を若い奴が出来る機会を増やしたいと思うし。

「好きこそものの上手なれ」だな。
そうなると、やはり「それをやりたいか否か」「それに興味があるか否か」がポイントかと。


たまたま読んだHarvard Business Review July 2004(日本版)の巻頭言にあたるOPINIONで
ノーベル賞を受賞された小柴昌俊東京大学名誉教授が書いた文も引用してみる。

『パッションがあるからこそ、夢は実現し、人間は進歩する。私が研究にひたすら没頭できたのは、幸運にも、パッションがかき立てられ、それが失われることのない環境が用意されていたからだ。』
『夢があればこそ、パッションが生まれる。また、パッションがあればこそ、夢が叶う。これは科学の世界に限られたことではないだろう。』


2 件のコメント:

  1. 『「やればできる」というような根性主義の自信ではない。合理的に考え、じっくり時間をかければ、見え方の違う次元に上ることが出来るという自覚である。』
    この一文に「あぁそうだな」と思いました。IT技術者の陥りそうな「知ってる」=「やればできる」の完結状態は、えてして無計画な実装につながる。そして根性で片付ける。覚えがあるなぁ。。(^^;

    返信削除
  2. 逆説的なコメントですが、そうですね。
    そうすると、根性主義の「自信」は実は「過信」と
    言うことかな。

    返信削除